megmuseum
私たちはLONDON-TOKYOを拠点にアートやデザインを行うユニットとして第一段階の成功を収め、MoMA(ニューヨーク近代美術館)、NEC、CASIOなど多くのインターナショナル・ブランドからオファーを受けるようになっている。
何よりも大切なことは、レオナルド・ダ・ヴィンチが作品に秘めたメッセージをもとに、ある作品を創りだそうとしていることだ。
現段階では『ダ・ヴィンチの秘宝』とでも呼ぶことにしよう。
ラッキーなことにエンジェルと呼ぶ支援者から1億円を超す出資を受け、2007年・銀座にコンセプトショップをオープンする。
数多くブランドを保有するラグジュアリーなグループの中でファッションブランドを設立する話も進んだ。
今や伝説となったカルチャー誌『STUDIO VOICE』ONLINEで活動を連載している。
1年後、サブプライム問題が発生。
その時私たちは、ハリウッド・ダンス・ムービーに主演を予定するスーパースター『ジャスティン・ティンバーレイク』のジュエリーデザインを依頼され、『マイケル・ジャクソン』の生誕50周年記念イベントを計画中で、一つのピークを迎えていたと思う。
崩壊の連鎖
リーマン・ショックによりビジネスは壊滅する。
雲の上を目指し、突き抜けた世界に大きな広がりを見つけたところだけど、どうやら時間らしい。
その世界にあったはずの足場が突然消えてしまい、スカイダイバーのようにダイブ..というよりはただ落下したのである。
なんとか不時着したが、そこにはもう何も見あたらない。
どうやらまた、一からやり直しのようだ。
恵比寿に見つけた小さなアトリエから再スタートだね。
ダ・ヴィンチの秘宝
完成を目指す作品の難易度は高く、人生を賭けたレベルでの創作となっている。
重要な表現ツールの一つとしてコンピュータ・グラフィックスを選択し、バーチャル・リアリティ(VR/AR/XR/Hologram)という新たな表現手法によるメディアアート構想を進めている。
人間の本質について深く知る必要があり、専門的なことに従事しているだけでは到底たどり着かないだろう。
主に仕事のチームを通じて人と関わり、さまざまな経験から人生に意味を見出すこと。また、問題を解決する力を身につけることで”魂を磨きあげることも必要だと思っている。
完成した作品は多くの人の心を開き、意識進化へと繋がるだろう。
制作期間に10年は欲しい。
この時間を生み出すことがひとつの大きな障壁となっている。
そして壁を越えるために継続的な収入を生み出す事業を確立しようと思う。
ファッションブランドの設立や作品を販売するショールームを設けることが、初期段階のベースとなる計画である。
その他にも必要と思うすべてのことを明らかにし『夢のリスト』を作成している。
バーチャル・リアリティ技術の洗練のためにバーチャルセットを使用したレギュラーTV番組をつくること。
テーマパークの3Dアトラクションを開発すること。
映画などの映像作品もつくりたい。
表現力を国際的な水準に高め維持するため、ブランドとのコラボレーションを積極的に行いたい。
このようなリスト内容を大筋として活動している。
リーマン・ショック以前に映画とテーマパーク以外のことはすべて達成したと思う。
ファッションブランド設立の件は制約が多く、私たちには向かないことが判明した為に辞退している。
蝶の誘い
プランの立て直しを模索していると、ウィーン在住の有名アーティストから映画制作の相談を受ける。
CGで『蝶』を作って欲しいということである。
私の作風を確認していると話の内容が変わってくる。
私たちの作品を国際映画祭へ出品することについてである。
良い機会なので、制作費を集めるためにスポンサーを探してみる。
『蝶』をテーマにした芸術映画には全くお金が集まらないようだ。
日本ではエンターテイメント以外にはお金が流れにくいのである。
青い鳥の幻想
活動を行う資金の確保が先決だ。
現代のキーワードとなる『サスティナビリティ(持続可能性)』を強く意識した事業を求めている。
世の中の流れ、背景などを踏まえ構想していると、ゴールド・マイニングの話が舞い込んでくる。
行く手を阻まれた国際金融問題へのリベンジである。
ゴールド(金)への関心が世界的に高まっているタイミングなのでチャンスかもしれない。
もし成功すれば理想的な収入源となり、資金的な問題をクリアできそうだ。
ロンドンに設立するベンチャー企業の役員に就任し、モンゴル金鉱山開発を目指すことになったのである。
元・三菱マテリアルの鉱山開発エキスパートやペンタゴンのプログラマーなど力強いブレーンが集結する。
そして何よりもリアリティを持たせてくれたのは、戦前にこのビジネスで成功を収めた祖父達ファミリーの存在である。
夢物語が現実になろうとしている。
プロジェクトは勢いよくスタートし、様々な準備が進んだ。
発掘エリアの調査や契約に至るまでクリアすべきステップは山積みだったが、関係者はみな目が輝いている。
予想される収益があまりにも巨万だったからだ。
真剣な顔つきを装ったが、皆、どこかニヤけている。
ただ、プロジェクトは順調に進行しているものの資金繰りが追いつかない。
大きな期待をよそに悪戯に時間だけが過ぎている。
まったく給料が発生していない。
プロジェクトは危険な匂いを発し、前回の苦いエピソードをフラッシュバックさせる。
そして実際に生活の危機に突入している。
『大丈夫?..』
状況をみかねたパートナーであるmegは、デザイナーで多才な才能があるにも関わらず本人に全く馴染みのないアルバイトの面接に行こうとしている。
それ程、最低限の生活を維持することが大切で、体裁など気にしている場合ではなかったのだろう。
新婚早々ひどい話になってしまい、男としても複雑な気持ちである。
次の日、恵比寿駅前にあるブランド・リサイクルの面接を受けたようだ。
『いつから?』
申し訳ない気持ちでいっぱいだったけど、聞いてみる。
『うん、面接ね。落ちたみたい..』
『えっ?!落ちた?』
『でも、お友達になって欲しいって..』
『友達?..』
そして、数ヶ月後、青山・骨董通りにオープンするブランド・リサイクル・ショップの総合プロデュースを依頼されることになったのである。
megの人柄とセンスに長年の夢が託されたのだ。
その間、私は知り合いの制作チームに入れてもらい、CMやPVなどをつくることになる。
クローゼットは繁栄の扉
青山にオープンしたショップは『kokon』と名付けられ、megの持ち味であるカリスマ性が発揮されすぐに賑わいをみせる。
そのスタイリングセンスやコミュニケーション能力の高さは、一流デザイナーやスタイリスト等、様々なジャンルのエキスパートから評価を受け多くの声がかかる。
また、メディア等のファッションリサーチにも頻繁に利用される。
リユースのビジネスモデルには予想外の魅力を感じている。
商品を売りにくるお客さんと、買いにくるお客さんがいるのだ。
生産や仕入れをしない事について不思議な感覚を覚える。
そのような発想が全く無かったからだ。
創ることで頭がいっぱいだったようだ。
日を追うごとにショップの認知度は増し、明るい評判も広まっている。
通り一番の繁盛店と言われるようになった頃、トラブルが発生。
プロジェクトの柱であるmegが倒れ緊急搬送される。
原因はストレス。
底抜けに明るい彼女、実は感受性が高くデリケートなのだ。
さらには2階の倉庫スペースが氾濫を起こしている。
ドアを開けると段ボールが山積みになり一歩も中へ入れない。
急遽、倉庫スペースのデザインを行うことにする。
ポイントは
・ストレスなく出し入れできること。
・何処に何があるか一目でわかること。
・最大量をストックできること。
条件を満たす空間デザインは、広めのウォークインクローゼットとして完成をする。
デザインの成功により、スタッフの動きがとてもスムーズになっている。
提案するスタイリングの幅が広がり、喜ぶ人は増え、ファッションを楽しむ人、スタイリストやタレントなどの利用も増えている。
結果として売り上げもアップしているのだ。
クローゼットを使いやすくすることで全ての巡りが良くなっている。
エネルギーが循環し、関わる人や物が補完しあい生態系のような営みを生み出している。
クローゼットの持つ潜在的な力の意味とリユースビジネスの本質的な考え方に気づいた価値は高く、予想外の収穫だ。
この素晴らしい発見について考えながら出勤したある朝のこと。
偶然にもmegと目が合いオノ・ヨーコさんが来店し、突然のサプライズに沈黙が走っている。
激励を受けたスタッフやお客さんも感激で目頭を熱くしているようだ。
その晩のニュースでオノ・ヨーコ来日報道がありメッセージが送られる。
ありがたいことに、そのメッセージからインスピレーションを受け、新しいビジネスモデルが完成したのである。
その中心的な役割を果たす組織として『POMPS』が誕生する。
瞬間の閃きは時空を超える。
『回りなさい、駒のように回り続けなさい』(オノ・ヨーコ)
POMPSと各ショップをメビウス回転(無限回転)させ、全体が融合し回り続けるシステム
『Re:』終わりからの始まり、回り続ける世界
順調に成長を重ね数年が経過した後、ビジネスパートナーであるショップ経営者の引退が決まる。
年齢を考慮した上での申し出である。
私たちは、このビジネスを繁栄させようと思っているので困ったことになっている。
この時点でのPOMPSは、複数の実店舗と全国のお客様を繋ぐ”要”のような存在であったため、実店舗がなければ機能しない。
ビジネスの継続について決断する必要がある。
ショップの新設を求められているのだ。
POMPS AOYAMA
様々な選択肢を検討した上でビジネスの続行を決める。
ついにショップオーナーになるのである。
有難いことに希望するテナントが見つかり、数十メートル移動した場所にPOMPS AOYAMAをオープンする。
ファッションビルの1Fでかなり広く、地階にはプールもあるリュクスな空間。
多くの芸能人からも利用される理想的なショップである。
東京オリンピックの開催が決まり、水面下にざわめきを感じる。
建物や道路などの都市開発が始まったようだ。
恵比寿のアトリエに立ち退き要請が入ったため、『自由』を目指し新しいエリアとなる自由が丘への移転を決意する。
開発が顕になり、新国立競技場の建設や様々な環境破壊について問題提起されることになる。
創造と破壊に対する不穏な空気が混沌を生んでいる。
夢のリスト
POMPS AOYAMAのオープンにより、ついに理想的な状態を取り戻すことに成功する。
時間の経過と共に自分達のペースをつかみ始めている。
この絶妙なタイミングにある”大物プロデューサーからの相談を受ける。
その人物は商業プロデュースを含めた都市開発により現代社会を牽引してきた存在である。
『CGで蝶をつくれるかな?..映画をつくるんだけど一緒にやらない?』
『蝶ですか?!…もちろんです!』
交わした握手に迷いはなかっただろう。
ようやく残された夢の1つが実現しようとしている。
その後、意識の共有を図るべくイベントを共にする。
環境開発について意識を共有している。
キャスティングやシーンの構想など準備が進みリアリティが増している。
そんな最中、まさかの通達を受けてしまう。
ビル側の事情による店舗への立退き要請である。
まいった、このままでは映画が作れない。
緊急に対策が必要である。
映画との兼ね合いもあるので、先ずは”大物プロデューサーに相談してみよう。
きっと良い解決策が見つかるはずだ。
事情を説明するとすぐに、2つの回答を用意してくれる。
①賃料が高すぎて借り手がつかない物件があるので、その物件をタダで借りること。(賃料を下げることはできない規約により数年借り手がない)
②ある施設の中に使用できるスペースがあり、そこへ店舗を新設すること。
流石というべき答えは、どちらも私たちになかった発想である。
それに加え、
③普通に物件を探して借りること。
以上の3択になるでしょう。
そして、それぞれ良い面と悪い面を持っている。
①のパターンで物件をタダで借りた場合、素晴らしい物件であるが持ち主の都合次第でいつまで続けられるかわからない。
②の場合は、好きなように店舗設計できる代わりに、ビジネスパートナーを募ることになりそうなので、何かに依存してしまうかもしれない。
③で普通に賃貸する場合は、今までと変わらない状態を作りやすいが、新たに多額の新設資金と大きなエネルギーを必要とする。
迷っている時間はないのだけど、なかなか決められない。
そんな中、さらに事態を困惑させる悩ましげな仕事のオファーを受ける。
それはテーマパークの案件で3Dアトラクション開発の話である。
さらにその他のテーマパークや海外リゾートの演出も視野に入れて欲しいそうだ。
私にはとても魅力的でファンタスティックなオファーである。
すべてを実現すれば1つ目の夢のリストはコンプリートである。
ますます決められない。
このような機会に恵まれることはそうないものだ。
テーマパークの件は大掛かりな為、数年はコミットすることになるだろう。
上手くいけばもっと長くなるかもしれない。
もし仕事を受けた場合、他の仕事と掛け持ちすることは難しい。
バランスと進化
この葛藤はPOMPSがバランスを崩したことから始まっている。
では、バランスを保つにはどうすれば良いのだろう?
今後の為にも本質を捉えておきたい。
コンフリクト解消のため、一度頭の中をリセットしてみよう。
すると、それぞれを比較していた時とは違う考え方が浮上してくる。
『インターネット』
もしインターネットを中心にサービスを稼働できるなら、物件に対する外部の干渉に振り回されることは無くなるだろう。
ビジネスモデルを進化させよう。
先ずはネットサービスをメインにし、後に実店舗を検討し補強していくのはどうだろう。
何よりも『回り続ける』ことが大切だからね。
今回はすべての選択肢を諦めて、優先的にネットサービスの確立を追及することに決めよう。
自分たちらしさが伝わるよう準備を始めよう。
新たな始まりである。
今、この物語と”あなたやわたしの間には繁栄の意識が芽生えている。
そして、豊かさを共有しようとしている。
Story:光永貴史